X線天文衛星「すざく」、10年余の観測で成果
―文部科学省の宇宙開発利用部会に報告
:宇宙航空研究開発機構(2015年11月5日発表)

 (国)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月5日、10年余にわたる観測活動を終えたX線天文衛星「すざく」の科学的成果に関し、同日開かれた文部科学省の宇宙開発利用部会に報告したと発表した。報告書では、銀河団の外縁部観測や、新しいタイプのブラックホール発見になどで成果を挙げたとしている。「すざく」は日本5番目のX線天文衛星で、X線望遠鏡など4つの観測装置を搭載、2005年7月10日にJAXAの内之浦宇宙空間観測所(鹿児島県肝付町)からM-Vロケット6号機で打ち上げられた。 

 

■銀河団の外縁部観測や新しいタイプのブラックホール発見

 

 今回の報告で「すざく」の代表的な科学成果として次の3つを挙げている。①ペルセウス銀河団の外縁部観測に初めて成功し、銀河団の形成・成長の理解が基本的に正しいことの初めて検証②可視光では普通の渦巻き銀河に見える2つの銀河をX線観測、中心部に厚い塵やガスに埋もれた新タイプのブラックホールを発見③「はくちょう座X-1」の観測でブラックホ-ルにガスが落ち込む最後の瞬間、急激に加熱され、高エネルギーX線を出すことを発見した。この加熱機構の詳細は今後の研究課題としている。

 「すざく」の仕事総量といえる搭載X線望遠鏡の指向方向変更回数は、約3200回に及んでいる。これら観測の対象となった天体は、全世界から募った観測提案から公平な審査で選ばれているので、「すざく」はまさしく”国際天文台”として機能していた。これらの観測から生まれた学術論文は2014年末までで762件。学位論文が227件で、そのうち64件が博士論文だった。また、「すざく」を主題とした国際研究会が既に5回、国内外で開かれている。

 「すざく」は打ち上げ直後、観測装置の一つの高分解能X線分光器に不具合が発生して宇宙X線源が観測できなくなったが、他の装置で可能な観測を実施、目標寿命の2年を大きく超える10年余も観測を続けた。しかし、衛星の動作状況を知らせる通信が間欠的にしかできないのが確認された2015年6月1日で科学観測を中断し、機能復旧に努めたがバッテリーの状況などから回復不能と判明、8月26日で「すざく」の観測運用は終了した。

 JAXAによれば、「すざく」の推進用燃料は既に排出済み。バッテリー切り離しも完了。今後、送信電波の停波を完了すれば公表。「すざく」の地球大気圏突入は2020年代前半の見込みという。

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