(国)理化学研究所は11月4日、生体の代謝バランスを評価する指標になる代謝バイオマーカーの新たな探索法を開発したと発表した。
■従来法より高精度、実用性を検証
生命を維持するために必須なエネルギーの獲得や各種の有機物を合成する生体内のすべての生化学反応のことを代謝といい、近年そうした生体反応の全体像を把握する手段としてメタボノミクスと呼ばれる手法が注目されている。
メタボノミクスは、生命活動によって生じる特異的な代謝物、例えば糖やアミノ酸、有機酸、ペプチド、脂肪などを網羅的に検出・解析して生体内のメカニズムを調べる手法のこと。しかし、それには、メタボノミクスで扱う膨大な代謝データの中から代謝バランスを客観的に評価するのに最適な代謝バイオマーカーを探索する技術がいる。
理研が新たに開発した代謝バイオマーカー探索法は、「クラスター支援MCR‐ALS法」といい、情報量の少ないわずかな変化しか示さない病気の発症シグナルから代謝バイオマーカーを見つけることができ、生物の健康という曖昧な情報を数値化し評価することが可能になるという。
開発した新探索法が実用的かどうか検証するため、濃度が分かっている物質の混合液のNMR(核磁気共鳴)データを使って検証し、従来の探索法と比較したところ、「従来法では混合液の違いを特徴付ける物質を6種しか検出できなかったが、新探索法ではさらに7つ、合計13物質で試料間の差異を示すことができた」(理研)という。
また、高脂肪食を与えたマウスや、加齢マウスの尿と糞のNMRデータを解析した結果、従来法より高精度で、代謝の変動を示す物質数が増えることや、これまでに報告されていた知見とよく対応することが分かったとしている。