化学物質漏洩に対応した大気と河川モデルを公開
―4時間ごとの評価など突発時に向け機能向上
:産業技術総合研究所(2015年10月19日発表)

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「ADMER Ver.3.0」で推定した化学物質の発生源寄与率の例(提供:(国)産業技術総合研究所)

 (国)産業技術総合研究所は10月19日、日常的に排出される化学物質のリスクを調べるため、10年以上前に作った「大気モデル(ADMER:アドマー)」と「河川モデル(SHANEL:シャネル)」の機能を向上させた新しいバージョンを公開した。地震や事故で化学物質が大気中や河川に漏洩する緊急時にも、濃度分布や発生源、汚染状況などが予測できる。

 

■発生源特定や、人間、生態系への影響を予測

 

 これまで公開してきたモデルは、化学物質の日常的な排出を想定したもので、事故などによる短時間の排出には対応していなかった。地震や産業事故などによる突発的な放出を想定した汚染状況予測のため、能力向上を行った。

 大気モデル「ADMER」は、毎月の平均の化学物質濃度を推定、評価するため2002年版を公表。パソコンで操作でき、自治体や企業関係者など約6000人がダウンロードしている。新たな「ADMER Ver.3.0」では、4時間ごとの気象データを使い、化学物質の拡散状況などを計算するほか、指定した地点でのシミュレーション期間中に最高濃度となる日時を特定する機能や、発生源解析機能を強化し、あらかじめ設定した地点について発生源寄与率を推定する機能を搭載、高濃度となった地点の要因がどの発生源なのか、化学物質の発生源も簡単に特定できるようにした。

 河川モデル「SHANEL」は、河川流域での化学物質のリスク評価に必要な河川の水中濃度を推定するモデルで、全国109の一級河川の流域データを搭載して2004年に公開後、界面活性剤の生態リスク調査などに活用されている。新たなモデル「SHANEL Ver.3.0」では,化学物質などの突発的な河川への流出に対し、短時間の解析ニーズが高まっていることから、これに対応したもので、時間解像度を向上、日単位の推定が可能となった。また、従来の1km格子から250m格子へ向上、突発的な排出の際の化学物質の濃度変化を推定することができ、漏洩想定地点からの影響範囲や期間を予測できるとしている。

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