筑波大学数理物質系の守友浩教授のグループは10月20日、将来の電池の有力タイプとみられる「ナトリウムイオン二次電池」の電池容量を高める主な要因が、正極でのナトリウムイオンの拡散にあることを実験で見つけたと発表した。
■電流密度が増大するとイオンの侵入をブロック
電気自動車から携帯電話まで幅広く使われている高性能電池は、リチウムイオン電池が主流になっている。しかし、リチウムはレアメタルで、産地が特定の国に限定されるため高価で、現地の政情などに左右される不安があった。ナトリウムは、リチウムと同じアルカリ金属で、性質が似ており、日本でも採掘される安価な資源のため、次世代の電池として研究が進められている。
最大の課題は、大量のナトリウムイオンを吸着・放出できる性質をもった電極(プラス極とマイナス極)の開発・製造にある。これまではイオンを出し入れする正極材料に加え、炭素系導電材、アルミニウム箔などが混合された電極が使われていて、電圧分布や海面状態が複雑となり、電極付近でのイオンの動向などメカニズムはつかめなかった。
守友浩教授らは、複雑な材料が使われる正極材料を簡素化し、最も典型的なナトリウム・コバルト酸化物の薄膜だけで、電流密度の増加に伴い電池容量が低下する原因を詳しく調べた。その結果、電流密度が大きくなると、イオンが電極粒子の表面に留まって次のイオンの侵入をブロックしていたため、容量が低下することを実験で解明した。
今後、イオンの動きやすい正極材料を開発し、ナトリウム電池の実現を目指すとしている。