持久力が高いほど認知機能が高く脳の老化防ぐ
―高齢者の心血管機能と認知機能の相関性が明らかに
:筑波大学/中央大学(2015年10月22日発表)

 筑波大学と中央大学の研究チームは10月22日、高齢者の心血管機能と認知機能の相関性について、身体の持久力が高いほど認知機能が高いことを発見したと発表した。また、持久力と認知機能が高い高齢者は、若者型の脳機能を保ち、持久力・認知機能の低い高齢者は、加齢型の脳機能に変化していることも明らかにした。日常生活での身体活動量を高めることが、脳の老化予防につながる可能性を示唆するものという。

 

■持久力・認知機能高い人は脳活動が若者型に

 

 心血管機能、いわゆる持久力と認知機能との直接的な関係性はこれまで明らかにされていなかった。また、その脳内機構も不明のままだった。

 研究チームは、60人の健常な男性高齢者を解析対象とした。男性は持久力の個人差が大きく、持久力と認知機能の関係が調べやすいためだ。持久力では、「換気性作業閾値」を測定した。これは、運動を強めていくと、あるところで二酸化炭素の排出が急増する。この運動強度での酸素摂取量を「換気性作業閾値」といい、生活に根ざした持久力といえるもの。

 認知機能では、ある目的のために思考や行動をコントロールする能力である「実行機能」に着目。これは脳の前頭前野が担う高い認知機能で、加齢によって低下しやすく、これを維持することが高齢者にとって重要なこととなる。

 また、研究チームは、加齢による脳活動の変化パターンとして、前頭前野の活動の側性変化にも着目、測定調査した。若者は脳の左半球優位の脳活動が見られ、高齢者では、両側性の活動が見られることが確認されている。

 その結果、持久力が高い高齢者は、前頭前野の司る「実行機能」が高く、また、持久力が高い高齢者ほど前頭前野背外側部の脳活動が右側に比べて左優位性という若者型であることが明らかになった。逆に持久力の低い高齢者ほど「実行機能」が低く、脳活動のパターンも加齢型となっていた。

 研究チームは、運動をはじめとする日常生活の活動性を少しでも維持しておくことが脳の老化を防ぎ、認知機能を高く維持することにつながることを示唆する知見となるとしている。また、今後は、持久力を高めることが脳の活動を若返らせ、認知機能向上につながるのか、さらに、女性の高齢者でも同じ効果が見られるのか、などが検討課題という。

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