「おとめ座」銀河団太陽系元素組成はほぼ同じ
―X線天文衛星「すざく」の観測で明らかに
:宇宙航空研究開発機構(2015年10月20日発表)

 (国)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は10月20日、宇宙の平均的な元素組成を知るため、X線天文衛星「すざく」で「おとめ座」銀河団の高温ガスの元素組成を調べた結果、銀河団は内側から外縁部にわたって元素組成が一定で、太陽系周辺とほぼ同じであることが明らかになったと発表した。「すざく」は日本で5番目のX線天文衛星で、2005年7月にJAXAの内之浦宇宙空間観測所(鹿児島県肝付町)からM-Vロケット6号機で打ち上げられ、地球を回りながら2015年8月まで運用されていた。

 

■銀河団内では元素がよく混ざり合った状態に

 

 JAXAの研究チームは「すざく」で観測時間をかけて銀河団の広い範囲にわたって元素の組成調べに取り組み、まず「ペルセウス座」銀河団で銀河団ガスに含まれる鉄の量の測定に成功。次いで、距離が最も近く、X線では2番目に”明るい”「おとめ座」銀河団を2週間観測、鉄、マグネシウム、ケイ素、硫黄の元素量を測定に成功した。

 その結果、「鉄、ケイ素、硫黄の元素の組成比は、ほぼ太陽や我々の銀河系にあるほとんどの星の組成比と同じ」と、研究チームの米・スタンフォード大のノーバート・ウイーナ博士はいう。

 「ペルセウス座」銀河団でも「おとめ座」銀河団でも、鉄の元素量は銀河団の内側から外側までほぼ一定で、「おとめ座」銀河団ではマグネシウム、ケイ素、硫黄も銀河団の外側までほぼ同じらしいことが分かった。

 このことから、銀河団内では元素がよく混ざり合っていて、組成は一様になっているらしい。つまり、太陽半径(約70万km)ぐらいのスケールの小さいものから銀河団のように数百万光年以上のスケールの大きなものまで、宇宙の元素組成は、ほぼ同じらしいことが分かった。

 「すざく」は銀河団の構造と進化などを探るため、日米協力で開発したX線天文衛星で、分光能力に優れたX線観測システムを搭載、当初2年半とされていた目標寿命を大幅に超えた2015年8月まで約10年使われ、この間に観測したデータの解析は引き続き行われている。

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