転炉スラグで根腐れなど野菜の難病被害を軽減
―土壌のpHを長期に矯正し「土壌伝染性フザリウム病」に対応
:農業・食品産業技術総合研究機構/東京農業大学ほか(2015年9月30日発表)

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ホウレンソウ萎凋病に対する被害軽減効果。左が土壌のpHを矯正していない区域、右が矯正した区域(提供:(国)農業・食品産業技術総合研究機構)

 (国)農業・食品産業技術総合研究機構は9月30日、野菜の根腐れやしおれを引き起こす難病「土壌伝染性フザリウム病」の被害軽減技術を開発したと発表、その研究成果集を公表した。この技術は、製鉄所の製鋼過程で多量に発生する転炉スラグを原料として利用するもので、これまでより土壌のpH(ペーハー:酸アルカリ度)を高くし、長く持続させることで野菜への被害を軽減する。

 

■生産者向けなど2種類の研究成果集を公表

 

 新技術は、農林水産省の3年間のプロジェクト研究として東京農業大学、青森県産業技術センター農業総合研究所、岩手県農業研究センター、宮城県農業・園芸総合研究所、福島県農業総合センターと共同で開発した。

 フザリウムは、土壌中に広く分布するカビ。土壌伝染性フザリウム病は、そのカビによる土壌病害。ホウレンソウ萎凋病やレタス根腐病、イチゴ萎黄病など120を超すさまざまな作物に発生し、薬剤や太陽熱などによる土壌消毒と抵抗性・耐病性品種利用による防除対策では十分な効果が得られず、野菜産地では脅威となっている。

 土壌伝染性フザリウム病は、土壌のpHが高くなるにつれて発生が少なくなるとする報告がされている。ただ、従来の消石灰や苦土石灰では、雨に溶けたりして持続的なpH維持は困難だった。新技術は、雨に溶けにくい転炉スラグを使い、次作以降にも持続する土壌pH矯正を実現、さらに野菜栽培の適正pH値6.5より高い7.5程度を維持できるようにした。

 公表した研究成果集は、紹介ページ(URL:http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/laboratory/tarc/material/056110.html)からダウンロードできる。この新技術を野菜栽培の現場に普及させるための生産者や普及・指導者向けと、試験研究関係者向けの詳細版の2種類が紹介されている。

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