低電圧で動作の有機強誘電体メモリーを印刷製造
―3Vの電圧でメモリー動作に成功、耐久性も確保
:産業技術総合研究所/高エネルギー加速器研究機構(2015年10月1日発表)

 (国)産業技術総合研究所は10月1日、同研究所フレキシブルエレクトロニクス研究センターと(国)理化学研究所、高エネルギー加速器研究機構などの共同研究グループが先進的な印刷技術を使って、常温・常圧下で有機材料を用いて強誘電体メモリーを製造する技術を開発したと発表した。これまで難しかった薄膜化と均質化を強誘電体単結晶作りで初めて実現し、わずか3Vの電圧でメモリーを動作させることに成功した。

 

■電子デバイスを全印刷法で作成可能に

 

 有機強誘電体材料として用いたのは2−メチルベンゾイミダール(MBI)で、有機溶剤に溶けやすく、印刷製造技術に適している。作製した有機強誘電体は低い電圧でもオン・オフが可能で、しかも数十万回以上繰り返し使っても性質が維持できる。このためICカードのように電源を使わずに記憶できる素子やトランジスタなどに使える見通しがたった。

 印刷技術を応用したプリンテッドエレクトロニクスは、常温、常圧のままで、高精細で高品質な電子素子の製造ができる利点がある。また、電子回路やパターン描画に合わせて材料を適切に使うため、資源の無駄がなく、ごみ減量にも役立つ環境適合型の画期的な製造技術とあって、世界中で盛んに利用されるようになった。

 これまでは金属配線やトランジスタには使われてきたが、その他の電子材料までは実現できていなかった。有機強誘電体の実現によって全てを印刷法で製造できる見通しがついた。携帯電話、液晶ディスプレイ、タッチパネル、ウエラブルコンピューターなどさまざまな電子機器の製造に応用が進むとみられる。

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有機強誘電体単結晶薄膜の作製過程(提供:(国)産業技術総合研究所)