高エネルギー加速器研究機構など11か国による国際共同研究グループは7月24日、素粒子ニュートリノのうちの「反ミュー型」と呼ばれるニュートリノが「反電子型」に変化する「反電子型ニュートリノ出現現象」に関する観測実験結果を公表した。観測された個数は3個と少なく、反電子型ニュートリノ出現現象の証拠をつかんだとは言い切れないが、今後、実験を重ねてデータを蓄積すれば、高い精度での測定が期待できるとしている。
■今後データ取得を7倍にして証拠把握目指す
ニュートリノは電気的に中性で質量が極めて小さいため、中性微子とも呼ばれている素粒子。電子型、ミュー型、タウ型と、それぞれの反粒子を合わせ3世代6種類あり、3世代が互いに他の種類に変わる「ニュートリノ振動」を起こすと考えられている。
研究グループは2年前に、これらの相互変化のうち、ミュー型ニュートリノが電子型ニュートリノに変化する「電子型ニュートリノ出現現象」の確かな証拠をつかむことに成功、今回はその反粒子の変化、つまり「反ミュー型」が「反電子型」に変わる「反電子型ニュートリノ出現現象」の観測に挑んでいた。
実験は2014年5月から2015年6月にかけて実施、茨城県東海村にある大型陽子加速器施設「J-PARC」で反ミュー型ニュートリノを発生させ、約295km離れた岐阜県飛騨市神岡町にある東京大学宇宙線研究所の素粒子検出施設スーパーカミオカンデでこれを受ける実験で、変化の検出を試みた。
その結果、今回はデータ件数が少なく確証は得られなかったが、研究グループは今後データの取得を7倍ぐらいに増やすことによって証拠をつかむ計画という。電子型ニュートリノ出現現象と反電子型ニュートリノ出現現象の結果を比較できれば宇宙における物質と反物質の存在に関わる「CP対称性の破れ」の確証につながるという。