高エネルギー加速器研究機構は7月25日、(独)日本原子力研究開発機構と共同運営する「J-PARC(ジェイパーク)」(茨城・東海村)のハドロン実験施設(原子核素粒子実験施設)で「T2K長基線ニュートリノ振動実験」(T2K実験)を5月26日に再開し、わが国で初めて反ニュートリノビームを生成して行い、同期した事象の観測に成功したと発表した。実験は、予定通り6月26日に無事終了した。
■秋からビーム強度上げて実験
同実験施設は、2013年5月23日に発生した放射性物質漏えい事故により、約1年間シャットダウンしていた。
T2K実験は、東海村(茨城)の同施設から発射したニュートリノを295km離れた神岡町(岐阜・高山市)のスーパーカミオカンデで補足する実験。2013年に世界で初めて電子ニュートリノ出現事象を発見している。再開した実験では、日本初の反ニュートリノビームを生成、次の目標である「CP対称性の破れ」を測定するためのニュートリノ振動測定を行った。
その結果、6月8日に、スーパーカミオカンデで、反ニュートリノビーム運転を開始してから初めて、それに同期した事象を観測することに成功した。
反ニュートリノは、ニュートリノの反粒子で、ニュートリノ(粒子)とそれぞれでニュートリノ振動測定を行い、それらの間の違いを調べることで、粒子と反粒子の違いを表す「CP対称性の破れ」が、ニュートリノに対して存在するのかどうかを検証する。
同実験では、この夏はメンテナンスなどのためシャットダウンし、秋からビーム強度を上げて測定を再開する予定でいる。