
近く運用を終了する磁気圏観測衛星「あけぼの」(提供:JAXA)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は4月10日、9日開かれた文部科学省の宇宙開発利用部会に磁気圏観測衛星「あけぼの」の4月末頃の運用終了を報告したと発表した。「あけぼの」は、オーロラの発光現象を26年間にわたって宇宙から観測。地球を取り巻く磁気圏やオーロラ発生の仕組み解明など多くの成果をあげてきたが、観測機器の劣化などでこれ以上運用を続けるのが困難と判断した。
■26年間観測、機器の劣化など進む
あけぼのは赤道と75度の角度で交わる長楕円軌道(遠地点高度1万500km、近地点高度270km)を飛行、オーロラ発光の原因となる宇宙からの高エネルギー電子の加速メカニズムの解明などを進めてきた。
これまでの観測で、高エネルギー電子は南北の半球とも冬には低い高度で、夏には高い高度で発生しやすいことを見出した。その結果、高エネルギー電子が大気中に高速で飛び込んで大気と衝突して発生するオーロラ発光は、夏よりも冬に発生しやすいことなどを突き止めた。また、地球を取り巻く強い放射線帯「ヴァン・アレン帯」は、11年周期で変動する太陽活動とともに位置や形を変えることなども明らかにした。
しかし、26年間にわたる運用で、あけぼのに搭載されている磁場計測器など9種類の科学観測機器のうち6種類が宇宙の放射線照射などによって故障したり性能が劣化したりした。さらに、超楕円軌道の遠地点高度も当初の半分以下の4000kmにまで下がり、今後の観測続行は難しいと判断した。
あけぼのは縦横126cm、高さ100cmの科学衛星で、打ち上げは1989年2月。今後はその成果を、来年度に打ち上げ予定のジオスペース探査衛星(ERG)による観測計画の立案やデータ解析に役立てる。