
熱水噴出口付近の海底。酸化物を好むチューブワーム、シンカイヒバリガイや硫化物と思われる白い沈殿物が見られる(提供:産業技術総合研究所)
(独)産業技術総合研究所は9月9日、鹿児島県徳之島の西側の海域に新たな海底火山の活動域を発見したと発表した。幅約500mの火口状の地形が海底にあることを確認、海底からガスが泡立ち熱水が噴出していることも分かった。レアメタルなどの資源が豊富な熱水鉱床を形成している可能性もあるため、今後、経済産業省などと連携して海洋資源開発に向けた調査を進める。
■無人潜水艇での撮影、試料採取も
発見したのは産総研の海洋地質調査グループの荒井晃作・研究グループ長ら。今年の7月20日から30日にかけて海洋資源調査船「白嶺」で海洋調査を実施した。
調査では、指向性の高い音波を海底に向けてその反射波から海底地形や地質構造を探った。その結果、火口状の地形があることなどが分かった。そこで、さらに無人潜水艇を使って船上から海底を観察したところ、海域の濁りやガスの泡立ち、活動的な熱水の噴出口が確認できた。
潜水艇に搭載したテレビカメラは、熱水噴出口付近に硫化物を食べるチューブワーム、シンカイヒバリガイなどの生物群集や硫化物と思われる白い沈殿物もとらえていた。また、潜水艇のマニピュレーターを操作してピンポイントで岩石試料の採取を行った。水温変化の調査では、熱水噴出口に近づくと急激な水温上昇が観測された。
この海域は、現在も活発な火山活動のあるトカラ列島の南西方向に位置しており、その火山活動がこの海域まで延長していたことが初めて確認できたことになる。このため、トカラ列島の火山活動がどのようにして生まれたかの解明など、新たな科学的な発見にもつながると期待している。
研究グループは、近くの海底には「さらに多くの別の熱水活動域が存在する可能性が高い」とみて今後、採取した試料の解析を続け、海洋資源開発につながる熱水鉱床の存在を探ることにしている。