動力使わず水流のみで駆動の揚水ポンプを開発
―水路より1~2mの高所に毎分100~350ℓ可能
:農村工学研究所/田中水力

 (独)農業・食品産業技術総合研究機構の農村工学研究所と田中水力(株)は9月10日、動力を一切使わずに水流のみで水をくみ上げる揚水ポンプを共同開発したと発表した。
 この新揚水ポンプは、「同軸メカニカルポンプ」といい、灌漑用水などの用水路の側面から水を引いている分水部に取り付ければエネルギーを使わずに水路の水位よりも1~2m高い場所に毎分100~350ℓの水を揚水することができる。

 

■既存の管路に敷設でき設置が容易

 

 農業用水は、灌漑のほか農薬散布、農業機械の洗浄など多目的に利用されている。それらは、農業用水路から用水の一部を電動ポンプやガソリンポンプによって揚水し利用する場合が多く、動力設備の設置とエネルギーがいる。
 新揚水ポンプは、農林水産省の「農業水利施設における未利用小規模水力の利活用技術の開発」の一環で研究に取り組み実現したもの。
 この同軸メカニカルポンプは、ポンプ口径が200mm、揚水管口径が80mmで、ポンプを通過する水流によって、水車羽根と水車羽根に付けた揚水羽根を回転させ、その回転力でポンプを通過する水の一部を揚水する仕組み。
 設置が容易なのも大きな特徴で、用水路の側面に新たに孔を開けて敷設するのではなく、用水路に既に取り付けられている既存の分水部の管路に敷設することができる。
 「用水路の水位より高い位置にある農地や給水所へ化石燃料を使用することなく、無動力で効率良く安定的に水を供給できる」と同研究所はいっている。

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同軸メカニカルポンプを水路に設置したときの水路横断面図(提供:農村工学研究所)