(独)農業・食品産業技術総合研究機構の農村工学研究所と(株)北陸精機は8月20日、流れが緩やかな開放型の農業用水路に簡単に設置して効率よく発電できる小型水車を開発したと発表した。幅90cmの水路で最大465W(ワット)の発電が可能で、エンジン発電機に比べ発電原価を25~30%削減できる。電力系統から離れた場所で照明や害獣防止のための電気柵などに電力を必要とする地域で役立つと期待している。
■幅90cmの水路で最大465Wの発電可能
開発した水車本体の直径は1mで、幅は90cm。この幅の矩形断面の水路であれば設置できる。水車には水位調節用のカバーと発電機を一体化。水位調節用のカバーは緩やかな勾配の水路でも常に上流側の水位が下流側を上回るように上げ下げし、効率のよい発電を可能にする。灌漑期と非灌漑期で水の流量が大きく変わるが、流量が多い場合はカバーを大きく開け、水があふれないように調節する仕組みだ。
開発した水車を勾配が500分の1から300分の1という緩やかな水路に設置した場合、水路幅1m当たりの流量が毎秒0.1~0.25m3で発電出力は最大465W、概ね100~400Wの電力が得られるという。耐用年数15年で設備利用率を70%として計算すると、最大出力で発電した場合に発電原価は、エンジン発電機に比べ約25%削減になるという。
激しい降雨時などには農業用水路の流量が大きく変化するが、この場合でも安全性を確保できるよう水位調節カバー、発電機とともに水車全体を持ち上げて緊急退避させるアームを一体化した。アームは水路に設置する時に水路側壁に固定する。
新しい小型水車は大規模な土木工事を必要とせずに設置できるため、「農村地域における再生可能エネルギーを利用したスマートビレッジの構築に貢献できる」と、同機構は期待している。