油をはじく耐熱性に優れた透明撥油塗膜を開発
―安全性・信頼性高く有機フッ素化合物に代わる処理技術
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は9月10日、油をよくはじく耐熱性の高い透明撥油(はつゆ)塗膜の開発に成功したと発表した。現在主流の有機フッ素化合物を用いた撥油処理に代わる安全性・信頼性の高い新たな処理技術として期待できるという。

 

■350℃で24時間以上の加熱でも撥油性変わらず

 

 開発した透明撥油塗膜は、メチルシランを主原料とする。塗膜を形成する際に特殊な装置などは必要とせず、樹脂やガラス、金属などほとんどの素材に利用でき、蒸留塔、エンジン、オイルポンプ、オイルダクトなど使用時に高温となる様々な装置・機材の表面撥油処理に活用できる。
 産総研はこれまでに、水をはじく撥水処理剤の有機シランとガラス原料となるスペーサーシランを原料として透明撥油塗膜を得ているが、耐熱性が劣っており、大気中150℃以上で長時間加熱すると塗膜が壊れ、撥油性が著しく低下するという弱点があった。
 今回開発した塗膜は350℃で24時間以上加熱しても撥油性は変化せず、高温に加熱した油にひたしても油滴の付着は起こらないという。
 メチルシランを主原料とした塗液をガラスやステンレス板、ポリイミドフィルムなどの基材に塗装した後、加熱乾燥すれば膜厚1μm(マイクロメートル、1μmは100万分の1m)程度の透明塗膜が得られ、特殊な機材や表面処理などは不要。
 現在、有機フッ素化合物が撥油剤の主原料として様々な産業分野で利用されているが、生体や環境中での残留性、生物蓄積性が指摘されるほか、フッ素源となる蛍石が資源的に偏在していて供給が不安定であるなどの問題があるため、産総研では有機フッ素化合物に依存しない技術の開発に取り組んでいた。
 新処理法の開発により、 透明撥油塗膜のコスト低減や安全性・信頼性の向上が期待できるとしている。

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