新開発ロケット「イプシロン」初打ち上げ成功
―惑星分光観測衛星「ひさき」、軌道に乗る
:宇宙航空研究開発機構

上は内之浦宇宙空間観測所からの打ち上げの瞬間。下は軌道に乗った惑星分光観測衛星「SPRINT-A」のイメージ図(提供:JAXA)

 (独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は9月14日午後2時、惑星分光観測衛星「SPRINT-A」を載せた新開発の固体燃料ロケット「イプシロン」1号機を内之浦宇宙空間観測所(鹿児島・肝付町)から打ち上げ、約1時間後に同衛星を地球周回軌道に乗せることに成功したと発表した。衛星は「ひさき」と名付けられた。JAXAによれば、この衛星名は同観測所に近い内之浦地域で最初に朝日が当たる岬の名前=「火崎」に由来するという。

 

■「自律点検」「モバイル管制」を採用

 

 「イプシロン」は7年前に運用を終えた固体燃料ロケット「M5」の後継機としてJAXAとIHIエアロスペースが205億円で共同開発した。3段式、長さ約24m、重さ約91tの大きさは「H-ⅡA」液体燃料ロケットの半分以下だが、重さ1t余の衛星を高度250~500kmの地球周回軌道に乗せられる。1段目ロケットは「H-ⅡA」の補助ブ-スタ-を活用、2、3段目には「M5」の上段モ-タ-を改良したものを用いるなど、既存技術を活用した。
 新開発の「イプシロン」ロケットは二つの新機能を持つ。一つが、内蔵した人工知能による「自律点検」。これで、これまで1カ月半はかかった打ち上げ準備が1週間に短縮された。二つ目がパソコンをシステムに接続する「モバイル管制」。これで「イプシロン」の打ち上げ管制は数人のスタッフが2台のパソコンで監視出来るようになった。これらにより、打ち上げ費用は「M5」の75億円に対して、量産すれば30億円になるという。
 「イプシロン」ロケット1号機が軌道に乗せた「SPRINT-A」は重さ約340kgの世界初の惑星用宇宙望遠鏡である。4×1×1mの箱型で、2枚の太陽電池展開時の幅は6m。計画では軌道傾斜31度、高度950~1,150kmの地球周回軌道を回りながら、木星や火星、金星のような地球型惑星の大気に対して、強い太陽風がどう作用するかを極端紫外線分光器で調べる。約2カ月間の初期運用を経て、来年から木星の観測を始める。
 当初、8月22日に予定された「イプシロン」ロケット1号機の打ち上げは、配線ミスで同27日に延期されたが、同日も発射19秒前にシステム異常の誤探知から打ち上げ中止となり、今度の9月14日の打ち上げとなった。この日も、打ち上げも最初の発射予定時刻の午後1時45分近くになってから、海上警戒区域に船舶が入りそうになったので、打ち上げは15分延期され、午後2時の発射となった。

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