(独)物質・材料研究機構は6月17日、腐食に強い酸化膜を作るアルミニウムの表面酸化の仕組みについて、20年来の謎を解明したと発表した。酸素分子が表面に吸着・解離する原子レベルの過程に関する議論にこれで決着がついたとしている。
■従来の反応機構の考え正す
アルミニウムは酸素に対して強い活性を持ち、表面に形成される緻密な酸化膜が空気中の酸素などによる腐食の進行を防止する。腐食に強い軽量金属材料として広く利用され、長年そのメカニズムが研究されてきたが、酸素分子が表面で起こしている原子レベルの動的反応過程は20年にわたり解けない謎だった。
研究チームは物材機構が独自に開発した2個の原子から成る直線状の酸素分子の分子軸方位を制御できる「酸素分子ビーム」を用い、分子軸がアルミニウム表面に垂直だったり水平だったりした場合の酸素分子の吸着確率などを調べた。
その結果、酸素吸着確率は分子軸方位に大きく依存し、運動エネルギーが0.1eV(電子ボルト)以下の低速の酸素分子は軸が表面に対して平行に近い場合にのみ吸着すること、また、0.2eV程度以上の酸素分子は軸方向によらず吸着することをつかんだ。
これまでは低速条件で軸が垂直の分子が吸着する機構が正しいと考えられ、このことが反応機構の議論を長年混乱させていた。今回の研究でこの誤りを証明できたという。