
内蔵されたモーターをコンピューターで制御してヒトの水泳運動を再現した東京工業大学の中島研究室が作製した水泳ロボット(提供:筑波大学)
筑波大学と東京工業大学は6月19日、「ヒト型水泳ロボット」を使って人間が泳ぐ時の推進メカニズムを解明したと発表した。筑波大体育系の高木英樹教授、東工大大学院理工学研究科の中島求・准教授らの研究成果で、「水泳におけるヒトの推進メカニズムを世界で初めて多角的に解明した」という。
■手部周りにできる渦の作用が推進力に
これまで解明できなかったのは、泳いでいる時に手や足が生み出している推進力を正確に測る方法がなかったからで、人間を使った実験では再現性のある正確なデータが得られなかった。
今回の成果は、その壁を破ったもので、東工大の中島研究室が開発したヒト型水泳ロボットに筑波大の回流水槽で人間の泳ぎを行なわせ、推進メカニズムを多角的に解明することに成功した。
東工大のヒト型水泳ロボットは、5つの自由度を持ち、内蔵されたモーターをコンピューターで制御して人間の水泳運動を行なわせる方式。今回、これを回流水槽で使って、筑波大が開発した粒子画像流速計測技術と呼ばれる方法で手部の周りの流速分布を可視化するとともに、圧力分布計測技術で推進力の発生源となる手部周りの圧力分布を計測して人間が泳ぐ時の推進メカニズムを多角的に解明した。その結果、手部周りに一対の渦の発生、その渦の効果によって非定常な流体力が引き起こされ、通常より大きな推進力が生まれることが分かった。
研究グループは、ヒト型水泳ロボットにどのような動きをさせた時推進力が大きくなるか今後さらに実験を進め、「世界最強の泳ぎを実現させるための究極の水泳技術の確立を目指す」といっている。