葉や枝など樹木の濃度は低下したが、土壌は増加
―福島県内の森林で放射性セシウムを調査
:森林総合研究所/林野庁

 (独)森林総合研究所は3月29日、林野庁の委託事業で行った福島県内の試験地3カ所での森林の落葉層や樹木の葉、土壌などの放射性セシウムに関する調査結果を発表した。調査は24年8月~9月に行われたもので、23年8月~9月の前回調査に比べ、葉や枝などの樹木のセシウム濃度は低下したものの、土壌のセシウム濃度は増大したことが分かった。

 

■樹木から雨や落葉で地表に移動

 

 東京電力福島第一原子力発電所の事故による放射性物質の降下を受けて、調査は、福島第一原発から26km~134kmの福島県川内村(スギ)、大玉村(スギ、アカマツ、コナラ)、只見町(スギ)で行われた。
 大玉村の調査地での樹種別濃度をみると、葉では、アカマツとスギの葉で1kg当たり2,000~4,000ベクレル、コナラで同167ベクレルだった。他の部位では樹種間で大きな差異はなく、枝や樹皮で同787~1,440ベクレル、落葉層で同13,600~18,100ベクレルだった。これらは、23年調査に比べて濃度が平均で6割と大幅に低下していた。一方、土壌は、同3,460~4,850ベクレルと、前回調査(同1,310~1,470ベクレル)より増加していた。
 3調査地点のスギの部位別の濃度は、葉の濃度が最も高く、枝、樹皮の順に低くなっていた、23年調査と比べて葉では平均7割低下、最も高濃度だった川内で、1kg当たり34万ベクレルから5万6,000ベクレルに低下していた。枝や樹皮でほぼ半分に、落葉層でも半分程度に低下した。しかし、土壌は、23年の同386~2万2,100ベクレルから24年は同905~5万ベクレルと、2~3倍の濃度に上昇した。
 森林全体の放射性セシウムの蓄積量は、大玉地区のスギ林で1㎡当たり10万4,000ベクレルから同9万ベクレルに、川内で同123万ベクレルから107万ベクレルにと、共に87%に減少。蓄積量の内訳では、土壌に65~77%分布、落葉層が13~26%、葉と枝でスギが9~14%、アカマツとコナラは4%以下だった。前回調査に比べ樹木や落葉層は半分以下に減少した一方、土壌への蓄積が2~3倍となった。
 こうした結果に、葉や枝など樹木のセシウム濃度が低下したのは、セシウムの物理的な減衰、雨などにより流されたこと、落葉して新しい葉になったことなどによるもので、セシウムが地表に移動したため、土壌の濃度や蓄積量が増大したと考えられるとしている。

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