(独)産業技術総合研究所は3月26日、1日周期でリズムを刻む体内時計のコントロールを受けて作られる物質を実験動物マウスの肝臓内で発見したと発表した。この物質は脂肪の蓄積やグリコーゲンの合成などを調節する重要な役割を担っていることが分かっており、正常に機能しなくなると体にメタボリックシンドロームや肝硬変などの影響を及ぼす可能性があるという。
■「不規則生活から肥満」を分子レベルで解明か
夜中の飲食や不規則な生活が肥満の原因になることは経験的に知られているが、今回の成果はそのメカニズムを初めて分子レベルで明らかにした可能性が高い、と研究グループはみている。
発見した物質は「C/EBPα」と呼ばれる分子で、肝臓内で1日24時間働いている遺伝子によって作られている。肝臓内でグリコーゲンの合成や糖の新生、脂肪の蓄積などの代謝を進める際に必要なタンパク質作りをする遺伝子を制御していることもわかった。さらにこの物質を作る遺伝子の一部に、クロック(Clock)と呼ばれる時計遺伝子が作るタンパク質と結合する特別な配列があることを突き止めた。
そこで研究グループは、マウスを使って肝臓内でこの物質がどのように作られるかを調べたところ、正常なマウスでは1日周期のリズムがみられた。しかし、この物質を作る遺伝子の一部にある特別な配列の一部を変化させておくと、そのリズムがみられず物質産生量も低かった。この結果について研究グループは、時計遺伝子がこの特別な配列を通じてC/EBPαの産生を制御しているとみている。
C/EBPαが肝臓内で制御している遺伝子の中には、朝は食物を分解してエネルギーを得るように働く一方、夜は反対にエネルギーを蓄積するように働くものがあると考えられるという。研究グループは「健康な生活を送るには時計遺伝子を正常に機能させ、肝臓などの臓器がそのリズムに伴って働くことが重要」としている。