ハニカムテクスチャ構造の表面拡大写真（提供：産業技術総合研究所）
（独）産業技術総合研究所は3月28日、太陽光発電技術研究組合と共同で、薄膜微結晶シリコン太陽電池では過去最高の発電効率10.5％を達成したと発表した。
■新方式で光吸収力をアップ
発電層に膜厚数μm（マイクロメートル、1μmは100万分の1m）以下の薄膜状のシリコンを利用したものを薄膜シリコン太陽電池といい、その薄膜が超微細なシリコン結晶で形成されていのが薄膜微結晶シリコン太陽電池。原料の資源的制約がほとんどなく、大面積基板に一度に製膜できることから低コストで量産できるという特徴を持つ。
しかし、薄膜微結晶シリコン太陽電池の発電効率は、これまで10.1％が最高だった。今回の発電効率アップは、薄膜微結晶シリコン太陽電池内部の光吸収力を高める新しい光閉じ込め構造を取り入れることで達成した。
これまでも、シリコン基板上に大きさ0.1～10μm程度の微細な凹凸を形成し、光吸収力を高めようとする試みはあったが、内部に欠陥が発生するため発電効率を上げることができなかった。
それに対し、新開発の光閉じ込め構造は、従来の不規則な凹凸を形成する光散乱構造とは異なり、薄膜微結晶シリコンの表面に微細な穴が規則正しく蜂の巣状に並ぶ「ハニカムテクスチャ」と呼ぶ周期構造を形成するという方式。
産総研では「今回開発した光閉じ込め構造を多接合型太陽電池に応用し、さらなる発電効率の向上を目指す」と次の展開を考えている。
一種類の半導体を用いた太陽電池では、利用できる太陽光の波長範囲に限界がある。そこで注目されているのが、利用できる波長帯の異なる太陽電池を積層し、可視域から近赤外域にわたる幅広い波長領域の太陽光を発電に使う多接合型太陽電池で、市販の薄膜シリコン太陽電池の多くがすでに発電層を2層持つ多接合タイプに変わってきている。
産総研は、さらに今回の成果を大面積太陽電池に応用する技術も検討し、低コスト太陽電池の実現を図りたいとしている。
