
PETフィルム上に作製した金メッキ微細パターン(提供:産業技術総合研究所)
(独)産業技術総合研究所は3月27日、プラスチック基板上のメッキ膜にパルス光を照射するとメッキ膜の密着性を向上できることを見出したと発表した。密着性を高めるためにメッキ対象物の表面を荒くする、いわゆる表面粗化を施す必要がない。フォトマスクをかぶせて上からパルス光を当てればメッキ膜のパターニングも行える。パルス光照射条件などを詰め、企業への技術移転を急ぎたいとしている。
■短時間で大面積も可能に
プラスチックやセラミックスなどの絶縁材料の金属メッキには無電解メッキが用いられる。メッキする基材表面に触媒を付け、メッキ液中に基材を浸して金属を析出させ被膜を形成するというもの。この無電解メッキでは被膜の密着性を得るために化学的エッチングなどで表面を粗くする表面粗化処理をあらかじめ施しておくことが欠かせない。
研究チームは今回、この表面粗化処理を行わずに成膜したメッキ膜に高強度のパルス光を極短時間(数百マイクロ秒)照射すると、メッキ膜とプラスチック基材の界面が瞬間的に加熱され、密着性が高まることを見出した。加熱は瞬間なので基材を痛めたり変形させたりすることはない。短時間で大面積のメッキ膜を処理することもできたという。
また、パルス光をフォトマスクを通して照射すると、マスクされた部分は密着性が低いので粘着テープで被膜を容易にはがすことができ、メッキ膜のパターニングが行えた。パルス光のエネルギーを上げると露光部のメッキ膜がエッチングされ、逆のパターンが得られることもわかったという。
微細パターンを持つフォトマスクを用いればPETフィルムなどに微細金属パターンの作製が可能で、今後用途の開拓が期待できるという。