負極材料のシリコン粒子の膨張を実測
―理論値の2倍、次世代材料の設計指針見直しも
:物質・材料研究機構/首都大学東京

 (独)物質・材料研究機構は3月27日、首都大学東京と共同でリチウムイオン電池の次世代電極材料であるシリコン粒子が充放電に伴って膨張する様子を実測することに成功したと発表した。従来考えられていたよりも最大で2倍も膨張することが分かった。電池の性能評価では体積当たりの蓄積エネルギー量が重要とされているため、次世代電極材料の開発には体積変化を考慮した設計指針が必要になるという。

 

■エネルギー密度は想定の半分程度に

 

 リチウムイオン電池は正極にリチウム含有金属酸化物を、負極にグラファイトを用いた二次電池で、高性能電池として携帯電話や電気自動車用に広く使われている。このリチウムイオン電池をさらに高性能化するための次世代負極材料として期待されているのがシリコンだが、充放電に伴う体積変化やメカニズムは分からなかった。
 そこで研究グループは、直径が10~2μm(マイクロメートル、1μmは100万分の1m)のシリコン粒子1個を使ってリチウムイオン電池と同様の電気化学反応を起こさせ、そのときにシリコン粒子が膨張する様子を顕微鏡で計測できるシステムを開発した。
 このシステムを用いた実験の結果、シリコン粒子の体積は最大で8倍にまで膨らむことが分かった。従来は理論的にみて4倍程度までしか膨張しないとされていたが、その予想を大きく上回ることが確認できたという。
 これまではシリコンを次世代負極材料として使えば、1cm3当たり約2,400mA/h(ミリアンペア時)という高いエネルギー密度で電力を蓄えられると考えられてきたが、今回の実測によってその半分程度しか性能が向上しない可能性が出てきた。
 この結果について、研究グループは「次世代負極材料の開発競争でシリコンの優位性が下がることを示している」として、設計指針の見直しも必要とみている。

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