(独)理化学研究所と明治薬科大学は12月13日、沖縄県の西表島と北海道の利尻島を対象に、生息する酵母の多様性調査を行い、その結果、1,021株の酵母を調査、183種に分類でき、そのうち約半数が新種と推定できるなど、南北に長い日本の酵母の種の多様性が明らかになったと発表した。
酵母は、自然界の植物や土壌などいろいろな所に生息する微生物で、日本酒やビールなど様々な発酵食品に利用されている。日本は南北に長く、亜寒帯から亜熱帯まで含み、地域ごとに植生も異なるため、多様な微生物が生息すると考えられている。しかし、これまでに包括的に調査したデータがなく、分かっている酵母は全体の5%程度といわれており、産業利用のためにも、日本の微生物の種の多様性や分布の特性の把握が求められている。
理研筑波研究所バイオリソースセンターと明治薬科大学の共同研究グループは、西表島と利尻島の植物と土壌からそれぞれ2回ずつサンプリングを行い、研究室で培養・純化したところ1,021株の酵母を分離した。その1,021株を、生物の系統関係の推定に利用されるリボソームRNA(リボソームリボ核酸:細胞の中でタンパク質を合成する器官リボソームにあるRNA)からの遺伝子の部分塩基配列に基づいて分類を行った。
その結果、これらの酵母は183種に分類でき、その半数は新種と推定できた。この183種という数は、現在確認されている酵母種(1,312種)の14%に相当する。
また、西表島と利尻島の両島で共通に分離された酵母種は15種だけで、塩基配列を基に地域間の有意差を調べたところ、西表島と利尻島の酵母の群集構造(数、種類)は明らかに異なった。このため、日本国内でも地域により生息する酵母種は全く異なることが分かり、地域における酵母の多様性を示した。
さらに、分類した183種の中には、バイオディーゼルの原料などに期待されている脂肪酸を蓄積する酵母も含まれており、産業利用できる酵母の存在も地域により特色があることを示した。
今回の成果は、日本の微生物資源の豊かさを改めて認識させるもので、今後、新たな酵母を産業利用する際に貢献できると期待される。また、今回得た塩基配列データは、すべて国際塩基配列データベース「INSD」に登録されており、今後、地球規模の微生物の多様性の理解にもつながると期待される。
No.2012-50
2012年12月10日~2012年12月16日