チャネル長3nmのトランジスタを作製
―LSIの消費電力低減に向け前進
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所の連携研究体グリーン・ナノエレクトロニクスセンター(GNC)は12月12日、チャネル長3nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)の微細なトランジスタを作製し、動作させることに成功したと発表した。LSI(大規模集積回路)の消費電力の低減につながる成果という。
 LSIの大規模化に伴い、膨大な数のトランジスタが消費するエネルギーを減らす技術の重要性が高まっている。企業5社(富士通研究所、東芝、日立製作所、ルネサスエレクトロニクス、アルバック)からの出向研究者と産総研の研究者から成るGNCは、LSIの消費電力を従来の10分の1~100分の1にする目標を掲げ、2011年度から研究開発に取り組み、今回ナノメートルスケールの構造制御技術と新しい接合技術を用いてエネルギー損失の少ない微細構造のトランジスタを作製した。
 シリコン結晶をアルカリ溶液で溶解した時にできるV字型の溝を利用、溝の先端部分を3nmの鋭さに仕上げ、この部分をチャネル(電子が流れる経路)とした。10nm以下の微細なトランジスタでは通常のPN接合の形成は困難なため、研究グループは今回、ゲート電極の電界によって作り出されるエネルギー障壁だけでトランジスタを動作させる新しい接合技術を採用、新構造のトランジスタを完成させた。
 トランジスタを流れる電子の速度を調べたところ、チャネル長3nmだと電子はほとんど散乱を受けずに準弾道的に流れていることが確認された。これはエネルギー損失なしに電気が流れることを意味しており、LSIの消費電力の低減が期待できるという。
 研究チームは、今回の成果を元に一層の低消費電力化が可能なトランジスタへと発展させたいとしている。

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試作したチャネル長3nmのトランジスタの電子顕微鏡像(提供:産業技術総合研究所)