(独)産業技術総合研究所と(独)物質・材料研究機構は12月10日、再生可能エネルギーの大規模導入に欠かせない高耐圧パワースイッチをダイヤモンド半導体で作ることに成功したと発表した。絶縁性の高い真空を使ってダイヤモンド表面から飛び出す電子をオン・オフする仕組みで、10kv(キロボルト)の電圧下で動作を確認した。100kVの高耐圧パワースイッチの大きさを従来の10分の1にすることも可能で、洋上風力発電の導入や高効率送電に大きく貢献すると期待している。
開発したのは産総研の竹内大輔主任研究員と物材機構の小泉聡主幹研究員らの研究グループ。
シリコンなどを材料とする従来の半導体素子でパワースイッチを作る試みもあるが、高電圧に耐えるために多数の素子を直列につなぐ必要があり小型化は困難だった。そこで研究グループは、高電圧でも電流を遮断できる絶縁体である真空に注目。さらに、スイッチオンの状態で大電流を流す電子放出源としてダイヤモンド半導体を利用した。
実験ではまず、ダイヤモンドの表面を水素原子で覆うと真空中に電子が飛び出しやすくなることを確認。さらにリンやホウ素など微量の不純物を注入したダイヤモンド半導体を組み合わせ、電子の真空中への放出を電気的に切り替えられるダイオードを試作した。
このダイオードを陰極役とし、陽極と0.1mmだけ離して真空中に設置してパワースイッチを試作した。実験の結果、電子放出がないオフ状態では両極間に10kVをかけても電流が流れなかったのに対し、オン状態では0V付近から電流が流れ、パワースイッチとして使えることが実証できた。入力電力のうちどれだけ出力されたかを表す電力伝達効率も73.7%となり、実用性を実証できた。
研究グループは「理論的には電圧が100kV以上の場合、電力伝達効率が99.9%を超える設計も可能」とみており、今後はさらに超高耐圧・高効率の小型パワースイッチの実用化を目指す。
No.2012-50
2012年12月10日~2012年12月16日