半導体中の微量元素分析に新手法
―省エネ型パワー半導体に応用
:産業技術総合研究所/高エネルギー加速器研究機構/イオンテクノセンター

 (独)産業技術総合研究所は11月15日、超電導検出器を利用したX線分光装置を高エネルギー加速器研究機構などと共同で開発、省エネ型のパワー半導体として注目される炭化ケイ素に注入した微量元素の分析に成功したと発表した。半導体では微量元素で電気特性を制御するが、これまで炭化ケイ素では高精度の分析手法がなく制御が難しかった。新手法は窒化ガリウムなど炭化ケイ素以外のワイドギャップ半導体や太陽電池の分析にも応用が期待できるとしている。
 産総研の大久保雅隆・計測フロンティア研究部門長が高エネ研・物質構造科学研究所と(株)イオンテクノセンターと共同で開発した。
 炭化ケイ素は、ダイヤモンド、窒化ガリウムなどと並んでワイドギャップ半導体と呼ばれ、その電子構造から電力用パワー素子として用いると電力損失の少ない省エネ型素子になると期待されている。
 炭化ケイ素は、広く電子素子に使われているシリコン半導体と比べ結晶構造が複雑なほか、注入する微量元素も炭化ケイ素を構成する元素と同じく軽い元素のため、通常のX線分光法では識別が難しい。このため、注入の際に結晶格子のどこに微量元素が入り込んだかなどが正確に分析できず、半導体として本来持つ特徴を十分に生かし切れなかった。
 そこで研究グループは、元素にX線を照射した際の吸収のされ方に微細な違いがあることに着目、元素の周りの原子配置や化学状態を調べられる「X線吸収微細構造分光法」と呼ばれるX線分光法を採用。さらに、同じ軽元素同士である炭化ケイ素の構成元素と微量元素を識別できるよう、超電導検出器を組み合わせて高い分解能を実現した。
 炭化ケイ素の結晶基板に窒素を注入、新手法で分析したところ、窒素が結晶中でシリコンや炭素とどのように結合をしているかなど、X線吸収の微細構造解析が可能なことが確認できた。研究グループは今後、新分析手法を他のワイドギャップ半導体や磁性材料などの微細構造解析に応用する計画だ。

詳しくはこちら