多機能で機能切替えできるオンデマンド型素子開発
―次世代の人工知能開発に大きく寄与
:物質・材料研究機構/米カリフォルニア大学

 (独)物質・材料研究機構は11月15日、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究者と共同で、一つの素子でありながらダイオード、スイッチ、キャパシタ、脳型記憶素子などの多機能性を備え、しかもこれらの機能を要求に応じて切り替えられる新概念のオンデマンド型素子を開発したと発表した。
 従来の半導体素子は、一度素子を構築して回路に配置してしまうと、その素子の機能を切り替えることは困難だった。新素子を用いると集積回路の素子数やサイズを減少でき、集積回路の機能を必要なときに切り替えられるプログラマブル回路の開発などが可能になるという。
 新素子は、固体内を酸素イオンと電子がともに移動することができる、いわゆる混合伝導体を金属電極で挟んだ積層構造になっている。具体的には、酸素欠陥(酸素原子が抜けた孔)を含んだ酸化タングステンを白金電極で挟んだ構成で、酸化タングステンを熱処理して酸素欠陥を構造内に形成し、混合伝導性を持たせた。
 この素子の電極に入力信号の電圧を印加すると、その入力信号の大きさや頻度に依存して酸化タングステン内で酸素イオンの移動や電気化学反応が生じる。3V程度の比較的小さな入力信号では酸素イオンだけが電極との界面付近に移動、電気伝導特性を変化させられる。7V程度の比較的大きな入力信号では酸素イオンの移動だけでなく電気化学反応も生じて、酸化タングステン内に電子伝導性フィラメントを形成できる。このフィラメントと電極との界面の酸素イオンの移動を制御することで電気伝導特性を多様に変化させられる。
 こうした変化により、ダイオード、抵抗、スイッチ、キャパシタをはじめ、学習や記憶といった様々な機能を生じさせることが可能で、機能の切り替えも実現した。
 今回発明した新素子は、現状の半導体集積回路の単なる発展ではなく、脳型回路との融合による次世代の人工知能やニューロコンピュータの開発にも大きく寄与することが期待できるという。 

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