(独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月15日、三菱重工業(株)と共同で、目に見えない放射性物質の分布状況を可視化する特殊なカメラを開発したと発表した。
名付けて「放射性物質見える化カメラ」。JAXAと三菱重工が共同開発した人工衛星搭載用のガンマ線検出器の技術を応用して実現した。三菱重工が今年度内に商用機の販売を開始する予定。
放射性物質から放出されたガンマ線が他の物質中の電子に衝突すると、ガンマ線のエネルギーと進む方向が変化する「コンプトン散乱」が生じる。
「放射性物質見える化カメラ」は、コンプトン散乱を活用して実現したもので、電子に渡したエネルギーと、ぶつかって散乱したガンマ線に残ったエネルギーとを、位置情報とともに測ることで、入ってきたガンマ線の方向を知る仕組み。
「放射性物質見える化カメラ」は、放射線の飛来方向とその波長をリアルタイムで同時測定でき、放射性セシウム134、同137、放射性ヨウ素などガンマ線を放出する物質の識別ができる。視野は180度と広く、「家屋の屋根や敷地など広範囲に集積した放射性物質の分布状況を簡易に画像化できる」とJAXAはいっている。
現在、JAXA、三菱重工、名古屋大学からなる開発チームが、(独)科学技術振興機構の協力を得て、さらなる高感度化と早期実用化に向けた開発に取り組んでいる。
No.2012-46
2012年11月12日~2012年11月18日