(独)物質・材料研究機構は10月4日、マイクロねじの専業メーカー(株)降矢技研、冷間圧造用鋼線メーカーの大阪精工(株)と共同で、鋼の結晶粒をナノレベル(ナノは10億分の1)まで微細化した超微細粒組織線材の量産化技術を開発、この鋼線を用いてスマートフォン(高機能携帯電話)などに使うマイクロねじを量産する技術を世界で初めて確立したと発表した。 超微細粒組織の鋼線からマイクロねじを作る工程は、これまでのような焼鈍、焼入れ・焼戻しなどの熱処理が不要で、従来のねじ製造法に比べてCO2排出量は50%削減したという。 金属の結晶粒を微細化すると強度が著しく上がることから超微細粒組織を持つ新材料の研究が進められている。しかし高強度化の反面、延性が下がったり、高強度な鋼線を素材としてねじ成形(冷間圧造)すると頭部に割れが生じたりし、微細粒組織材料を量産できる技術もなかったことから実用化されていない。 研究チームは、鋼線を温間加工温度域の500℃で多方向から強圧延する連続的な加工法を開発、鋼の結晶粒を200nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)レベルまで超微細化し、強度が大きく高延性で、ねじ成形しても割れない製法を生み出すことに成功した。 大阪精工は、量産型の連続圧延機を導入して超微細粒組織の鋼線の量産化を確立、降矢技研は、この鋼線を成形する圧造法に改良を加え、高強度なマイクロねじの量産化にめどをつけた。超微細粒鋼の実用技術の開発は、これが初めてという。 熱処理を必要とした従来の製法ではねじ製造1t当たり470kgのCO2を排出したが、新製法だと排出を半分に抑えられる。製造したマイクロねじはスマートフォンの実機に使われ、すでに1年以上の実績を持つという。 開発した新技術・新材料は、携帯電話のねじだけではなく自動車用ボルトや医療用の精密部品など応用分野は広く、今後広範な用途開拓が期待できるとしている。
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上の普通鋼は粒径20μm、下の超微細粒鋼は粒径500nm、普通鋼の数百倍の粒密度となっている(提供:物質・材料研究機構) |
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