高エネルギー加速器研究機構(KEK)とアステラス製薬(株)は9月20日、「顧みられない熱帯病」の治療に向けた創薬の共同研究契約を締結したと発表した。KEKの放射光施設を利用して病原タンパク質の立体構造を解明し、それに基づく薬物の設計に取り組む。
「顧みられない熱帯病」は、熱帯地域を中心に蔓延している寄生虫や細菌による感染症。エイズ、マラリア、結核の3大感染症に対し、住血吸虫症、デング熱、狂犬病、ハンセン病などの17の疾患群が焦点の感染症とされ、貧困層を中心に世界で約10億人が感染、毎年50万人が死亡しているといわれている。
KEKとアステラス製薬は今回、「顧みられない熱帯病」のうちの寄生原虫による感染症である「リーシュマニア症」、「シャーガス病」、「アフリカ睡眠病」を対象に共同研究する。リーシュマニア症は、リーシュマニア原虫が寄生虫で、サシチョウバエが媒介、98カ国で発症が認められている。シャーガス病は、アメリカトリパノソーマ症ともいい、ラテンアメリカ地域21カ国でみられる風土病。サシガメ科の昆虫が媒介する。アフリカ睡眠病は、サハラ砂漠以南の国々における風土病。ツェツェバエにかまれ感染する。
共同研究では、放射光を使って治療薬の標的となり得る寄生原虫タンパク質の三次元構造を解析し、疾患を引き起こす原因となるタンパク質の働きを妨げる阻害化合物を選定する。さらに、標的タンパク質と阻害化合物との複合体の構造解析を行う計画。
これらによって得られる構造情報は、寄生原虫治療薬の創薬研究に寄与するとしている。
No.2012-38
2012年9月17日~2012年9月23日