(独)農業・食品産業技術総合研究機構の作物研究所と(独)農業生物資源研究所は9月10日、野生稲の染色体を日本の水稲品種に導入した「野生稲染色体断片導入系統群」を開発したと発表した。野生稲に潜む有用な遺伝子を見出すことが期待でき、品種改良に役立つという。
開発したのは、日本の水稲品種の染色体の一部を、野生種の染色体の一部で置き換えた系統の一群。野生種は約20種類知られ、アジアや中南米、アフリカ、オセアニアに広く自生しているが、今回、タイ原産野生種「オリザ ルフィポゴン(O.rufipogon)」の染色体を「コシヒカリ」に導入した系統群を2種類、スリナム原産野生種「オリザ グルメパチュラ(O.glumaepatula)」を「いただき」に導入した系統群を1種類、計3種類開発した。
稲の染色体は12本だが、系統群を構成する系統はそれらを細分した断片を置き換えたもので、3種類の系統群は40系統~47系統からなり、系統群全体で元来の野生稲の染色体全体をほぼカバーしている。
現在栽培されている水稲品種は、野生稲から長い年月にわたる選抜を経て選び出されたと考えられており、選抜の過程で栽培種からは失われてしまった有用な遺伝子が野生稲にはまだ残っていると見られている。
野生稲の染色体全体をカバーした系統群の開発は初めてのことであり、これらの系統群を様々な育種目標の形質について評価することにより、新しい遺伝子を野生稲から見出すことが期待できるという。
育成された系統群は作物研究所のホームページで公開され、研究者に提供されている。
No.2012-37
2012年9月10日~2012年9月16日