マヨラナ粒子を操る量子デバイスを設計
―トポロジカル量子計算の基礎技術に
:物質・材料研究機構

 (独)物質・材料研究機構は9月13日、強力な計算力を持つ量子計算技術への展開が期待されるマヨラナ粒子の操作方法を見出し、それを具体化した量子デバイスを設計したと発表した。このデバイスを用いるとマヨラナ粒子を自在に搬送・交換でき、量子計算に利用できることが確認できたという。
 マヨラナ粒子は、イタリアの理論物理学者エットーレ・マヨラナが1937年に存在を予言した粒子と反粒子が同一の粒子。例えば電子の場合、粒子としての電子は負の電荷を持ち、その反粒子である陽電子は正の電荷を持つが、マヨラナ粒子は、粒子と反粒子に電荷の正負の違いはなく、電気的に中性な「掴みどころがない粒子」といわれている。
 マヨラナ粒子は、未だ発見されていないが、近年、特殊な超電導状態の準粒子励起(格子系のフォノン、磁性体のマグノンのような準粒子の励起状態)がマヨラナ粒子として振る舞うことが明らかにされている。また、マヨラナ粒子を用いたトポロジカル量子計算という新方式の量子計算の可能性が浮上している。この方式だと、これまでの量子計算技術で問題になっていた電磁場ノイズなどの影響は受けにくいが、マヨラナ粒子は、電気的に中性なので操作が極めて難しいという問題がある。
 研究チームは今回、トポロジカル超電導状態という特殊な系について理論計算を行い、マヨラナ粒子が特定の位置に存在することを見出した。さらに理論計算の知見に基づいて、いくつかのトポロジカル超電導サンプルが、くびれ部分を通じてつながった量子デバイスを考案し、くびれ部でのゲート電圧のスイッチングだけでマヨラナ粒子を自在に搬送・交換できることを見出した。これらは、トポロジカル量子計算の基礎となる技術につながる成果という。
 今回設計した量子デバイスは、大規模なトポロジカル量子ビット操作に拡張できるため、今後の量子計算の実装に役立つとしている。

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