牛の体外受精卵の凍結保存後生存率を大幅にアップ
―従来の67%を91%へ、低コストで実現
:畜産草地研究所/東京大学/秋田県畜産試験場

 (独)農業・食品産業技術総合研究機構の畜産草地研究所は9月14日、東京大学、秋田県畜産試験場と共同で、牛の体外受精卵の凍結保存後の生存率を大幅に高める技術を開発したと発表した。
 優秀な牛の受精卵を他の牛に移植する受精卵移植により、優れた資質を受け継いだ子牛を多数得ることが可能になり、その一つに体外の培養液中で受精させた卵子を移植する体外受精卵移植技術がある。
 しかし、牛の体外受精卵は、マウスなどに比べて脂肪の含有量が多いことから保存するための凍結に弱い。凍結保存後の生存率が低く、わが国の場合、受精卵移植による子牛生産(2009年度で年間22,666頭)のうち、体外受精卵移植によるものは10.6%にとどまっている。
 新技術は、牛の受精卵の培養液に健康食品に使われているビタミン様物質の「L-カルニチン」を添加するという方法で、体外受精卵の凍結保存後の生存率を大幅に高めることに成功した。L-カルチニンは、受精卵の脂肪減少などをもたらし、受精卵の活力を高める効果があるとみられている。牛の受精卵培養液1mℓ(1cc)にL-カルニチンを0.6mg添加することで体外培養時の生産率は、32.4%から44.6%に向上。体外受精卵の凍結保存後の生存率は、それまでの66.9%から91.0%にまでアップできたという。
 培養液1mℓは、約200頭の牛の受精卵を培養できる量だが、それに添加する「L-カルニチン0.6mgのコストは4円相当」と安価なことから普及が期待される。

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脂肪を赤く染色した牛の受精卵。A)はL-カルニチンを添加せずに培養したもの。B)はL-カルニチンを添加して培養したもので、L-カルニチンの効果で、受精卵の脂肪が減少したため、赤い色が弱い(提供:畜産草地研究所)