ナノレベルの3次元応力解析シミュレーター開発
―微細デバイス、最先端LSIの高速化などに朗報
:産業技術総合研究所/(株)先端力学シミュレーション研究所

 (独)産業技術総合研究所(産総研)は9月11日、(株)先端力学シミュレーション研究所と共同で、微細シリコンデバイスに加えられている応力をnm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)レベルで解析できる3次元応力解析シミュレーターを開発したと発表した。トランジスタで電子や正孔の流れを電界で制御するチャンネル部分が立体構造になった、最先端高密度集積回路の高速化・低消費電力化などへの貢献が期待される。
 最先端の半導体デバイスでは、高速化・高性能化のためにチャンネル領域に応力を積極的に加えてキャリア(電子や正孔)を流れ易くすることが行われている。だが、加える応力にバラツキがあると、トランジスタ性能にバラツキが出てしまう。そこで、応力がデバイス性能に与える影響を知り、デバイス構造設計や製造工程に反映させるため、デバイス内部の応力分布を高い空間分解能で評価できる手法が求められてきた。
 産総研らの研究グループは、産総研が半導体MIRAIプロジェクトで培った技術(光学顕微鏡によるラマン分光法)に改良を加え、今回の成果を得た。この手法では、試料に当てた光が試料の内部構造や分子の振動エネルギーの差に応じた、入射光とは異なる波長で散乱する現象を利用する。これまで数多くあった問題点を解消、応力のかかった微細シリコンデバイスの光学的な応答を正確に再現できるようにした。
 新シミュレーションシステムでは、測定の際の入射光と散乱光の伝搬を電磁場解析と応力解析とを組み合わせて行い、高精度に校正してから、結果を画像表示する。産総研では今後、開発した測定評価技術を組み込んだラマン計測システムの製品化を図ることにしている。

詳しくはこちら