(独)産業技術総合研究所は9月10日、細胞核内の「パラスペックル」という構造体を構成するタンパク質を新たに35種類見出し、これらを含む40種以上のタンパク質がノンコーディングRNA(リボ核酸)=ncRNA:タンパク質の暗号化に関わっていないRNA=を骨格に、パラスペックルを構築する過程を解明したと発表した。
がんや糖尿病などの難治疾患の発症に関連して近年、ncRNAの機能が注目されている。この、機能解明によって、これまでは得られなかった新しい治療や診断技術につながる知見が得られることが期待されている。
新たに同定したタンパク質の中には、神経変性疾患やがんの発症に関わる制御因子が含まれており、パラスペックルが疾患関連タンパク質の機能制御に関わっている可能性が考えられるとしている。
パラスペックルは、直径約0.3μm(マイクロメートル、1μmは100万分の1m)の球形構造体で、DNA(デオキシリボ核酸)の入った細胞核の中にある。「NEAT1」と呼ばれるncRNAを骨格に、40種類以上のRNA結合タンパク質でできており、特定の遺伝子発現制御の場などとして機能していると考えられている。
パラスペックルについて最近こうしたことが分かってきたが、産総研の研究チームは今回、これまで判明している5種類のパラスペックル構成タンパク質に加え、新たに35種類のタンパク質を同定することに成功した。産総研が持つ「ヒト完全長cDNAライブラリー」という遺伝子関連情報を用いたスクリーニングによって同定した。同定したタンパク質の大部分はRNA結合性の制御因子であったという。
また、NEAT1の生合成、NEAT1の安定化、タンパク質会合による構造構築というステップを踏まえてパラスペックルが構築されることが分かったという。
研究チームは今後、パラスペックル構造体が細胞内や個体内でどのような生理機能を果たしているのかを調べるとともに、新しい創薬標的としてncRNA機能を明らかにしていきたいとしている。
No.2012-37
2012年9月10日~2012年9月16日