(独)国際農林水産業研究センター(JIRCAS)は9月11日、東京大学、理化学研究所、産業技術総合研究所と共同で、乾燥ストレス条件下で、イネの伸長が抑制されるメカニズムを解明したと発表した。 近年、世界的な干ばつが続いており、農作物は大きな被害を受けている。特に開発途上地域での被害を抑えるため、干ばつに強い作物を開発し、リスクを軽減することが重要になっている。 作物は、干ばつなどストレスを受ける条件の下では生育が抑制され、収量が減少するが、その詳細なメカニズムはこれまで不明のままであった。このため共同研究では、ストレス時にイネの生育を制御する因子に着目して研究を進めた。 その結果、イネでは、「OsPIL1」と名付けられた遺伝子の働きが、乾燥ストレスの条件下で抑制されることで、伸長が抑さえられることが明らかになった。その一方で、OsPIL1の働きを強化したイネの草丈は、乾燥ストレスのない生育条件下では、約2倍に増加し、大人の背丈と同じ程度にまで伸びた。 さらに、OsPIL1がコントロールしている遺伝子を調べた結果、細胞壁の合成や、細胞の伸長に関する遺伝子が多く見出された。 この研究から、イネの遺伝子OsPIL1は、多くの遺伝子の働きをコントロールする転写因子(細胞の核内に存在し、遺伝子の働きを調節する細胞の司令塔の役割をするタンパク質)を作る遺伝子であることが分かった。また、乾燥ストレスを受けたイネでは、OsPIL1の働きが抑えられることで、細胞壁の合成や細胞の伸長に関する遺伝子の働きが抑制される結果、伸長が抑えられることが明らかになった。 今後、OsPIL1を活用することによって、干ばつ下での作物の生育不良を改善する技術開発に大きく貢献することが期待される。 研究成果は、9月10日付けの「米国科学アカデミー紀要」(オンライン版)に掲載された。
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乾燥ストレスのない条件下では、右の通常のイネに比べ、OsPIL1の働きを強化したイネは草丈が高くなった(提供:国際農林水産業研究センター) |
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