(独)農業生物資源研究所は6月6日、中国科学院東北地理農業生態研究所、北海道大学、佐賀大学、公益財団法人かずさDNA研究所と共同で、世界で初めて大豆の開花期に最も大きな影響を及ぼす遺伝子(E1遺伝子)を解明したと発表した。
植物は、日の長さ(日長)を感知して開花の時期を制御する性質(日長反応性)を持っている。大豆は、日の長さが短くなると開花が促進される短日植物で、この日長反応性に最も大きな効果を示す遺伝子を有することは1927年に報告されていたが、その遺伝子の実体はこれまで分かっていなかった。
今回の研究では、様々な大豆の種子が持つ遺伝子型を解析し、効率よくE1遺伝子を見つける手法を開発してE1遺伝子の配列を解析した。その結果、E1遺伝子は、これまで機能の報告がなされていない遺伝子であることが分かった。
昼の時間が長い長日条件では、E1遺伝子の発現が誘導され、開花に直接関わるフロリゲン遺伝子の発現を抑制するのに対し、昼の長さが短い短日条件では、E1遺伝子の発現が抑制され、フロリゲン遺伝子の発現が促進されることで開花することが明らかになった。
北海道で栽培されている早生品種の「カリユタカ」は、E1型の遺伝子を持っているが、正常な光の受容体がないため、これまで通常の条件ではE1型の遺伝子は発現していなかった。今回、遺伝子組換え実験により「カリユタカ」に正常なE1遺伝子を導入した。その結果、E1遺伝子の発現量が増加するとダイズフロリゲン遺伝子の発現が減少し、開花の時期が遅くなることが分かった。
正常なE1遺伝子(正常型)は、174個のアミノ酸で構成されている。大豆の品種の中には、アミノ酸の一つに変化が生じた遺伝子を持つ品種など、E1遺伝子の一部が変化した変異遺伝子を持つ品種が存在する。これらの変異遺伝子を利用することにより、約20日の幅で開花期を制御できることも分かった。
今後、変異遺伝子を識別できるDNA(デオキシリボ核酸)マーカーを用いた選抜により、栽培地域の日長に応じた品種を開発することで、大豆の安定生産につながると期待される。
No.2012-23
2012年6月4日~2012年6月10日