(独)農業・食品産業技術総合研究機構の畜産草地研究所は5月24日、分娩後の雌牛の子宮から胎盤が排出される際に働くシグナル物質を世界で始めて北海道立総合研究機構、共立製薬(株)と共同で見つけ、このシグナル物質を牛に投与して昼間の分娩誘起に成功したと発表した。
牛の出産は、昼夜を問わず起こり、畜産農家にとって深夜の分娩介護はつらい仕事。国内では、深夜の分娩に立ち会えなかったことが原因で年間約5万頭もの子牛が死んでいる。
この問題の解決策としてホルモン剤の投与で昼に分娩を誘起させる方法が研究されているが、子宮から胎盤が排出されない胎盤停滞という現象が避けられず、分娩後の胎盤排出をどのようにして行わせるかという課題が残されている。
発見した胎盤剥離シグナル物質は、「オキソアラキドン酸」といい、ホルモン剤を投与する分娩誘起法にこの物質の注射を追加処置として組み合わせることで昼間に胎盤停滞のない分娩を高確率で誘起させることに成功した。
畜産草地研は、「無理のない昼間の分娩介護の実施により子牛の生存率が上がり、仮に生存率を1%改善できればその経済効果は年間9億円程度になる」としている。
No.2012-21
2012年5月21日~2012年5月27日