「多成分超電導」で起きる新規物性現象を解明―超電導量子素子へ期待
:物質・材料研究機構

 (独)物質・材料研究機構は5月22日、室温超電導実現のカギと考えられている「多成分超電導」で起きる新規物性現象を解明したと発表した。新しい高温超電導体として注目される鉄系超電導体のように、異なる電子軌道の電子が同時に超電導になる多成分超電導で、3成分の場合でも安定した状態が理論的に存在しうることを突き止めた。実験的に確認できれば超電導の本質的な理解と新しい超電導素子の実現などに役立つと期待している。
 極低温下で起きる超電導現象は、理論的にもすでに解明され、BCS理論として確立している。超電導が起きるには2つの電子がペアになることが必要だが、極低温下では、超電導体の結晶の格子振動が電子対を作るノリの役割を果たしている。
 一方、高温超電導では電子間の相互作用から生じる磁気エネルギーがノリの役割をするが、それには電子同士の電気的反発力を打ち消す必要がある。2成分の場合は、各成分の超電導の相互関係(位相)が逆になることで電子の反発力が打ち消される。
 これに対し、3成分では直接反発力を打ち消すことはできないが、各成分の位相差が振動しながら伝わる状態「Leggettモード」が理論的に安定的に存在、電磁場と直接結合しないために質量ゼロで高速に伝搬しうることを突き止めた。このLeggettモードはまだ実験的に直接観測されていないが、存在しているとすれば鉄系超電導体の特性などが統一的に説明できるという。
 同機構は「Leggettモードの解明は超電導原種の本質を理解する上で重要な意味を持つ。今後、実験的な手法による直接的な観測が期待される」と話している。

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