カーボンナノチューブ使い光化学反応の効率上げる
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は5月22日、炭素原子でできた超微小な筒状構造物であるカーボンナノチューブ(CNT)を反応容器の“試験管”として利用すると、極短パルスレーザーによる光化学反応の効率が高まることが大型スーパーコンピューターを用いたシミュレーションで明らかになったと発表した。極短パルスレーザーとCNTを組み合わせた新しい物質合成技術の開発などが期待できるとしている。
 筒状のCNTの内部は中空構造になっており、ここに金属や有機分子を内包できることが実験的に分かっている。また、極短パルスレーザーによる光化学反応では、ガス状の分子に直接光を当てるよりも、CNTの内部に分子を入れて光を当てた方が光の照射効率が高いと期待されている。
 しかし、CNTの存在が反応に与える影響やCNT内部で生じる現象を実験的に調べることは難しいため、研究グループは(独)海洋研究開発機構の大型スーパーコンピューター「地球シミュレータ」を用いて、2個のアセチレン分子を対象に、パルス幅がフェムト秒(フェムトは1000兆分の1)台の極短パルスレーザーを照射した場合に起こる現象を数値計算手法で調べた。
 その結果、レーザーによる電子励起(高いエネルギー軌道への電子の移動)によってカーボンナノチューブに内包された2個のアセチレン分子にガス状態では実現できない協調的な回転運動が引き起こされること、また、分子が反応しやすい姿勢を保ったまま励起状態を保持できることが分かったという。研究チームは今後、CNTに内包された分子の化学反応効率を最高にするための条件を数値計算で探索し、新規材料の設計・合成に役立てたいとしている。

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