変性タンパク質を元に戻す有機ナノチューブ開発
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は5月23日、分子の立体構造が変化して酵素活性などが失われた変性タンパク質を元通りにする有機ナノチューブを開発したと発表した。ナノチューブの中空部にタンパク質を取り込むことで立体構図を正常化、酵素活性の復活を従来法に比べ最大9倍に効率化できる。ナノチューブに取り込まれたタンパク質は、熱や化学物質による変性にも強いため、同研究所はバイオリアクターや酵素センサーへの応用展開も期待している。
 開発した有機ナノチューブは、内径10nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)と20nmの中空構造を持つ2種類。同研究所はこれまで糖やアミノ酸、脂肪酸など有機化合物を使ってさまざまなナノ材料作りを進めてきたが、今回はその技術をナノチューブ作りに応用した。
 有機ナノチューブ作りは、分子が自然の力で一定の形に並ぶ自己組織化の性質を利用、さらにナノチューブができる過程で中空部分に異常タンパク質がうまく取り込まれるよう内側の表面の性質を変えるなどの工夫をした。
 実験では、変性して酵素活性が損なわれた緑色蛍光タンパク質やクエン酸合成酵素など3種類のタンパク質を有機ナノチューブの中空部分に取り込んだ。その結果、酵素活性が回復したものが、従来の変性タンパク質溶液を水で薄めるだけの方法に比べて最大9倍にも達した。こうして酵素活性が回復したタンパク質を有機ナノチューブから回収することも可能という。これらの実験から、酵素活性の回復には対象となるタンパク質に対して適切な内径の有機ナノチューブが必要なことも分かった。
 同研究所は今後、さまざまなタンパク質に対して中空構造の表面や内径を適切に制御した有機ナノチューブ作りに取り組む計画だ。

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乾燥した有機ナノチューブの電子顕微鏡写真(提供:産業技術総合研究所)