スピン起電力のリアルタイム検出に成功― ナノスピン電池に道
:物質・材料研究機構/京都大学など

 (独)物質・材料研究機構は5月22日、京都大学、東邦大学、大阪大学、(独)日本原子力研究開発機構、米国マイアミ大学の研究者と共同で、強磁性金属のミクロな領域(強磁性円盤)で発生する「スピン起電力」をリアルタイム(実時間)で検出することに成功したと発表した。同研究陣は、この検出成功をnm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)スケールの「ナノスピン電池の実現」といっている。
 磁場の時間的な変化が回路に起電力をもたらす―エレクトロニクスの根幹をなすファラデーの「電磁誘導の法則」で、起電力は磁場が電子の「電荷」に作用する力を反映している。一方、電子の磁気的性質である「スピン」に作用する力もあり、この力のことを「スピン起電力」といい、強磁性金属中で発生することが知られている。
 しかし、スピン起電力が発生する領域は、数十nmと極めて小さく、かつ変化が複雑なため、これまで平均化したシグナルの検出報告しかなかった。
 物材研などの研究チームは、強磁性金属の数μm(マイクロメートル、1μmは100万分の1m)程度の強磁性円盤から発生するスピン起電力の実時間観測に成功したもので、「ナノスピン電池の実現」とプレスリリースは表現している。
 実時間観測したスピン起電力は、プラス・マイナス約1μV(マイクロボルト、1μVは100万分の1V)で、同一条件でのコンピューターシミュレーションの結果とも一致しているという。
 この研究成果は、5月23日発行の英国の科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」電子版に掲載された。