(独)産業技術総合研究所は5月23日、光を当てると損傷が直って元の状態に戻る光応答性のゲル材料を開発したと発表した。塗料などへの利用が期待され、今後、企業と実用化を目指した共同研究を行いたいとしている。 牛乳のような微粒子(コロイド)が均一に分散した液体をゾルといい、ゾルが流動性を失い固体状になったもののことをゲルと呼ぶ 開発したゲル材料は、光照射で生じるゾル-ゲル転移を利用してゲル材料表面の傷を修復するというもの。新ゲル材料は、光が当たると特性が変わるアゾベンゼン誘導体を少量溶した液晶に高分子微粒子を分散させて作る。 このゲル材料の表面にできた傷に対しまず紫外光をレンズで集光して照射する。すると照射部分では、ゲル状態からゾル状態に変わる転移が起き、傷がゾル状態の材料でふさがれ、これに可視光を照射してやるとゾル状態が再び元のゲル状態に戻るという仕組み。 実験では、深さ約2mmの傷を紫外光、可視光ともわずか約10秒間照射するだけで修復できることを確認している。 同研究所は、アゾベンゼン誘導体以外の材料を使うゾル-ゲル状態の光制御技術の研究、より低温で光修復が可能なゲルやより高強度のゲル材料の開発を引き続き行う予定で、コーティング塗料を始めさまざまな産業分野での応用を目指したいとしている。
詳しくはこちら
|
 |
損傷を受けた新材料(上)が、紫外線を約10秒間当て(中)、さらに可視光を10秒ほど当てた結果、元通りに修復できた(提供:産業技術総合研究所) |
|