空気中の蒸気を感知して発光するフィルムを開発
:物質・材料研究機/科学技術振興機構

 (独)物質・材料研究機構と(独)科学技術振興機構(JST)は5月21日、空気中の物質の蒸気を感知して発光する「有機・金属ハイブリッドポリマー」を開発したと発表した。
 物質の蒸気を感知して光る物質は、ベイポルミネセンス物質と呼ばれるが、まだ研究の報告例は少なく、実用化を目指す研究もほとんど行われていなかった。また、これまで開発されたベイポルミネセンス物質は、蒸気を受けた時の発光強度の変化がわずかだったり、変化に時間がかかったり(数分から数十分)、蒸気を取り込むと劣化するなど、問題点が多かった。応答が速いなどの今回の研究結果から今後、空気中の微量物質を検出する発光センサーや新たなディスプレイへの応用に向けた研究が進むと期待される。
 開発した有機/金属ハイブリッドポリマーは、金属イオンのユウロビウムイオンと有機分子がnm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)スケールで交互に数珠つなぎのように連絡することで高分子(ポリマー)鎖が形成された構造になっている。このため、一般の有機材料(プラスチック・ゴム・塗料)と同様に溶剤を用いて加工・印刷などを行うことができる。
 研究グループは、新しく開発した有機・金属ハイブリッドポリマーを用いて、酸性やアルカリ性の気体を感知できる発光性ポリマーフィルムを合成した。酸性の蒸気に触れることで消え、アルカリ性の蒸気に触れると光だすもので、蒸気を感知して表示と非表示を繰り返すことができる。
 この発光性ポリマーフィルムは、(1)蒸気を感知して発光状態から消光状態へ(あるいは消光状態から発光状態へ)はっきりと大きく発光強度が変わる、(2)応答が速い(蒸気をかざして数秒で変わる)、(3)発光と消光を繰り返し行える、(4)このポリマーを溶かした溶液を朱肉のように用いることで、ハンコを押すように任意の文字を印字することができる―などの優れた特徴を持っている。

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印字された文字のベイポルミネセンス表示。蒸気の性質で表示・非表示となる(提供:物質・材料研究機構)