植物の耐凍性向上させる新しい遺伝子を発見
:農業・食品産業技術総合研究機構

 (独)農業・食品産業技術総合研究機構は8月19日、同機構の北海道農業研究センターが植物の耐凍性を制御する新しい遺伝子を発見し、耐凍性が向上した植物の作出に成功したと発表した。
 冬作物の真冬の凍害や路地野菜などの霜害による被害を低減するためには、作物の耐凍性を高める必要がある。耐凍性とは、0℃以下の凍結温度に対する耐性をいう。多くの越冬性植物は、晩秋の低温に曝されると、冬の凍結温度にも耐えて越冬できる能力を獲得する。しかし、どのような仕組みで越冬性が獲得されるのかについては、よく分かっていない。
 細菌や植物を低温で生育すると、「低温ショックタンパク質」と呼ばれる一群のタンパク質が細胞内に蓄積される。研究グループは、遺伝学的解析が容易な実験植物であるシロイヌナズナを用いて、このタンパク質と耐凍性の関係を調べた。
 その結果、シロイヌナズナには、低温ショックタンパク質を作り出す4つの遺伝子があるが、そのうちの1つ「CSP3」を欠損させることにより、耐凍性が著しく低下することが明らかになった。実験では、野生型のシロイヌナズナでは、マイナス4ºC凍結後でも生存しているものが多いのに対し、「CSP3」遺伝子を欠損した変異型では、枯死(葉が白色化)したものが多かった。
 また、「CPS3」遺伝子を多く発現させ、その働きを常に高めるように組み換えたシロイヌナズナ(「CPS3」高発現体)では、耐凍性の強化に成功した。
 植物で耐凍性を制御する遺伝子に関する知識は、これまで限られていた。今回の研究でこれまで知られていなかった新しい機構によって、植物の耐凍性がコントロールされていることが明らかになった。
 この研究成果は、米国の科学誌「Journal of Biological Chemistry」の8月28日号に掲載された。

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