高エネルギー加速器研究機構は8月22日、つくば市(茨城)の同機構内にある電子陽電子衝突型加速器(KEKB)を使った実験で新しい物理学のヒントとなる現象を観測したと発表した。
実験を行ったのは、世界の15の国と地域、61の研究機関の研究者約400人が参加している国際共同研究チームの「Belle実験グループ」。これまでも新しい粒子の発見など多くの成果をあげてきたが、今回の成果は素粒子物理学の基礎になっている「標準理論」にあてはまらない新しい現象を見つけたもの。
物質の最も基本的な粒子はクォークで、6種類存在する。Bell実験グループは、その内の2番目に重いボトム・クォークを含む中間子(B中間子)を大量に作り出し、B中間子と反B中間子のペア(対)のデータを8億対以上蓄積しているが、B中間子が電子と陽電子のペアなどを放出しながら別の軽い粒子に崩壊していく過程を詳細に解析した。
その結果、B中間子の崩壊で生じた電子・陽電子ペアなどの放出される方向が標準理論の予想値と異なることを発見した。
この崩壊は、崩壊率が極めて低く稀なため、これまでは測定が難しかった。KEKBの性能が向上し観測データが増えたことで初めて測定が可能になったもので、今回の測定では約250個の崩壊を捉えたとしている。
この成果は、8月17日からドイツのハンブルグ市で開かれた「レプトン・フォトン国際会議」で発表した。
No.2009-33
2009年8月17日~2009年8月23日