(独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は3月25日、この2月に打ち上げから20周年を迎えた磁気圏観測衛星「あけぼの」(EXOS-D)の成果と現状を、同日開かれた宇宙開発委員会に報告したと発表した。
「あけぼの」は、オーロラ粒子の加速と関係する磁気圏の現象を探る衛星で、1989年2月22日、M-3SII型ロケット4号機で宇宙科学研究所(当時、現JAXA)が内之浦宇宙空間観測所(鹿児島)から打ち上げた。9種の観測機器を搭載した重さ約300kgの「あけぼの」は、現在、高度約300~5,000kmの準極軌道を回りながら、観測データを今も地球に送っている。
既に20年余、運用されている「あけぼの」は、電気的機能を持たない測地実験衛星「あじさい」(1986年8月打ち上げ)を除けば、日本が打ち上げた人工衛星で最も寿命の長い衛星である。放射線による損傷で運用停止したオーロラ撮像カメラと電場計測プローブ以外の7つの観測機器は、いずれも打ち上げ時の性能をほぼ維持、あるいは若干劣化したものの、現在でも運用されており、北極上空のオーロラ現象はスエーデンのエスレンジ局が、プラズマ圏や放射線帯のデータは内之浦局が、それぞれ主として受信している。
20年を超す「あけぼの」の長期観測データから、当初の目的であるオーロラ粒子加速機構に影響を与える要素が次第に明らかになってきた。例えば、[1]オーロラ粒子の加速域は高度3,000~10,000kmで、冬半球では低高度に、夏半球では高高度に発生する[2]オーロラ粒子の加速は磁場に沿った大きな電場の加速である[3]極域での超高層現象関係では太陽光が当たらない冬半球における電離圏で電気抵抗が増大、加速域の大きな電場を支える―ことなどが分かった。
太陽磁場の極性の反転は、22年周期で起こることが知られている。黒点の数で代表される太陽活動の11年周期より長い。つまり、太陽のあらゆる状況に応じた磁気圏の反応を知るには22年間に及ぶ連続した観測データが必要なわけだ。「あけぼの」による磁気圏の連続観測は、今年で20年。少なくともあと2年間、無事に観測が続くことが期待されている。
No.2009-12
2009年3月23日~2009年3月29日