(独)産業技術総合研究所は3月25日、グリセリン誘導体の1つで化学品や医薬品などへの多様な用途展開が期待されている「D-グリセリン酸」を効率良く作る生産法を開発したと発表した。
石油代替燃料として菜種油などから得られるバイオディーゼル燃料(BDF)が世界的に注目を浴びている。そのBDF製造で課題となっているのが、副生する大量のグリセリンの有効利用。新技術は、それに応えるもので、グリセリンを酸化能力の高い酢酸菌で酸化し、高効率でD-グリセリン酸に変えることに成功した。
D-グリセリン酸は、アルコールの代謝を促進する作用や肝疾患治療効果をはじめ優れた生物機能を持っているが、まだ工業的生産方法が確立されていないのが現状。このため、高効率で、安価に量産できる製法の開発が求められている。
これまでにも微生物を使ってグリセリンからD-グリセリン酸を作った報告はあるが、多くの細菌は20%以上のグリセリンが存在すると生育が非常に悪くなってしまい、高濃度のグリセリンを原料にしてD-グリセリン酸を効率良く作ることができなかった。
同研究所は、エタノール(エチルアルコール)から食用の酢(酢酸)を作る働きを持つ酢酸菌の中から高濃度のグリセリンを効率良く酸化してD-グリセリン酸に変換する「グリコノバクター属細菌株」を見つけたもので、グリセリン濃度が22%の原料から1ℓ当たり約90gのD-グリセリン酸を得ることに成功した。
BDFの製造過程から出る副生グリセリンには、通常メタノール(メチルアルコール)などの不純物が数%含まれるが、その除去問題も解決したという。
No.2009-12
2009年3月23日~2009年3月29日