毛髪サイズの極細金属管を複雑形状に加工できる装置を開発
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は3月26日、直径100µm(マイクロメートル、1µmは100万分の1m)以下の極細管に対して、微細複雑形状の加工ができる「レーザー電解複合加工機」を開発したと発表した。
  医療の分野では直径200µm以下のカテーテル(中空の柔らかい管)などの医療用器具が、また、電子工業の分野では直径100µm以下の極細化の製品が求められているが、従来の機械加工などの方法では、直径300µm程度以下の極細管に微細複雑形状の加工をすることは困難だった。
 同研究所では、これまで加工対象物に適した複数の加工法を同時または順番に同一加工装置内に組み合わせ、いったん加工対象物を取り付けたら、取り外すことなく複数の加工法を利用でき、高能率高精度を可能とする「複合加工技術」などについて研究を行ってきた。
 今回開発したレーザー電解複合加工機は、レーザー形状加工法と電解仕上げ加工法を同一加工装置上で組み合わせ、加工対象物を高能率・高精度で加工する装置で、新たに開発した「保持誤差補正機能付きレーザー加工技術」や「保持誤差補正機能付き電解加工技術」などの技術が取り入れられている。
 このため、光学系では、加工用レーザー光源と同一の光源を用いて計測を行うことが実現し、計測位置と加工位置のずれがない形状計測・加工が可能になった。また、レーザー加工で生成される熱影響層を除去するために、微細電解加工法により仕上げ加工を行うことができる。この機能により、仕上げを行う部分や加工する量を高精度に制御することが可能となった。
 研究グループは、この装置の有効性を実証するために、レーザー計測・加工、電解加工を用いて、毛髪サイズのステンレス製極細管表面への微細複雑形状加工を行い、実現することができた。
 新技術は、脳外科手術用カテーテルなどの医療器具や、高密度電子回路検査用コンタクトプローブなど、従来微細複雑形状加工を行うことが困難であった高付加価値デバイスの加工への適用が期待されている。

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直径90µm、内径40μmのステンレス管への加工例(提供:産業技術総合研究所)